歴史オンチが予習も予備知識もなしに『関ヶ原』を見に行った結果

映画『関ヶ原』を見てきた! ものすごく面白かった! ちょー面白かったし、最後は涙が止まらなくて劇場の明かりがつくのが恥ずかしかった。

大河を完走できたことのない歴史オンチで、特別だれかのファンってこともなく、予習なんてビタイチしてなかったし、睡眠時間3時間のうえに肉体労働でくたくたの仕事帰りでもぜんぜん問題なかった!

きっかけはTwitterの大河クラスタ

本来は興味のないジャンルの映画を、なぜ私が見に行ったかと言うと、Twitterでフォローしている大河ドラマ好きの方々から毎日のようにおすすめツイートが流れてくるので、すっかり影響されてしまったからだ。

先陣を切ってこの映画を見に行くような人たちは、そこそこ、もしくはものすごく歴史に詳しいと思われるのだが、それでも「台詞が聞き取れない」「武将の見分けがつかない」「展開が早くてついていけない」と困惑の声が多いようだった。

しかし困惑しつつもそれ以上に「傑作」「最高」「これは見るべき」って熱気が凄かったんですわ。

で、見るなら予習が必要って話もあったんだけど、そこまでするのは面倒くさくて、つまんなかったらつまんなかったでしょうがない。とりあえずどれくらい分からないのか見てみたい、という動機で映画館に足を運んだ。

2時間半後のわたくし「関ヶ原ちょー傑作!ちょー面白かった!時代劇バンザイ!」(そして頼まれたわけでもない感想文を書き散らかしている次第)

映画の最初の方、初芽と石田三成が出会うあたりで、もう誰が何のために何をしているのかさっぱり意味不明で「私には無理だったか」と諦めかけたけど、結果なんとかなった。

劇場を出てTwitterで他の人の感想を見るまで竹杖を築城だと思ってたくらい聞き取りにも知識にも難があったけどめっちゃ感動しましたよ(いや、築城にしては何かおかしいとは思ったんだけどさ……)。

言葉も歴史も分からないし顔の見分けもつかなかったけど、登場人物の動作、所作、表情と感情と、画面の美しさ、迫力が伝わってきたのでそれだけでも十分に見ごたえがあったし、石田三成の人物像が何しろ独特で興味深く、見る前は長いと思った2時間半でも、まったく飽きなかった。

戦国武将ばかりだから、そんなに華美な建物や衣装は出てこないのだけど、着物も建物も自然も本当に美しかった。撮影&照明の技術とロケに使われた本物の文化財の力強さに、なんどもため息をついて見とれてしまった。

石田三成ってこんな人だっけ!?

そもそも『関ヶ原』ってCMとか宣伝コピーの印象だと、もっと主人公らしい主人公で、もっとストレートに良い人なのかと思ってたらぜんぜん違ってたんですよね。石田三成像としては『真田丸』の三成さんのがよっぽど同情できたもの。そりゃ家康に狂人呼ばわりもされるわ!的な。

三成さんをまったく美化する気がないのか、美化するのに失敗してるのかわからない感じで、かなり身も蓋もなく困ったちゃんに見えるのがすごかった。しかも困ったちゃんなのにどうしても嫌いになれない。

うっかり「こんな三成さんの味方ができるのは私だけなんじゃない!?」と思わされちゃう感じ。

石田三成の忠義心とか、有能さとか、正義感ゆえの融通のきかなさとか、実直で純粋だからこそ時勢に勝てなかった哀れさとかは、『真田丸』で丁寧に描かれてたから、逆に『関ヶ原』のみっちゃんは、けっこう「待て待て!いくらなんでもお前ってやつは!」って感じだったんだよなぁ。でも憎めない。そして涙。

自分がそう思ってしまっただけに、映画のなかで三成に巻き込まれていく人々にもやけに共感できる仕組みだったのかもしれない。

思うに、岡田准一の演じた石田三成は戦闘能力が高すぎる。『軍師官兵衛』でも『真田丸』でも、石田三成って典型的な頭脳派であり、役人肌だったじゃないですか。

岡田三成は武士として強いから、これまで知っていた石田三成とその周囲のような文官VS武官の図にならない。強くて賢くて正しいからこそ、見ていて困ってしまったんだなぁ。「もっと上手くやれそうなのに何故……困った人だな……まったく……」というような。

初芽との恋愛要素にしても、そんなもんいらんやろ!って思ったし、告白場面は唐突で中途半端で生温くて、あってもなくても良いっつーか、むしろ映画的には邪魔ですらあった。

けれども後から思い返すと、関ヶ原の敗戦後の身の処し方といい、ぜんぶひっくるめて「あの石田三成」の行動としてはまったくブレのない必然の場面だった気がしてきた。

大黒柱は島左近

その一方、突き抜けすぎて人を選ぶ三成さんと対称的に、誰が見ても抜群にカッコいいのが島左近!

昔から評価の高い武将である上に、この映画を見た人の99%は左近様に惚れたに違いない(あ、左近様の評価は鑑賞後にぐぐりました)。言動もビジュアルもほんっとうにカッコよかった。しかも奥さんも格好いい!

ときとして素っ頓狂にすら見える三成さんと違って、左近様の行動原理は分りやすく筋が通っているし、キャラが立っているので、私の場合は左近様に注目してたからこそ、馴染みのない戦国ワールドでも最後まで集中が途切れずにいられた気がする。

島左近以外にも見どころはたくさんあったけど、島左近がいたから、それ以外の見どころを味わうことができたって感じ。

もう1人、分りやすく面白かったのが徳川家康。あの迫力と愛嬌と知略と冷血っぷりは凄かった。映画を見たあと大河の『直虎』を見てても、いつ家康が豹変するかと気が気じゃないという後遺症に悩んでます。

東出くんの小早川は前評判でも良いと聞いてはいたけど、ほんとに良かった。あれは泣く。東出くんと小早川秀秋の株がまとめて上がった。

あとあと!滝藤賢一の豊臣秀吉は、いまだかつて見たことのないほど人相の悪い秀吉だった。めっちゃガラ悪い。めっちゃおっかない。戦国アウトレイジ。もうちょっと三成との場面が見たかったけども。

正直、何が泣けるのか自分でもわからない

捉えられた三成と小早川との会話のあたりから席を立つまで涙が止まらないくらいだったのだけど、ハンカチを握りしめつつ自分でもなんでこんなに泣けるのかわけがわからなかった。

なにせこの『関ヶ原』の石田三成はピュアで真面目と言うには、あまりにも常軌を逸しているし、キャラとしては好みでもなんでもない。確かに予想外に面白く見ていたけれど、共感よりもツッコミばかりだったのに、なんで最後の最後でこんなにまで心を掴まれたのか。

もしかして顔!?

岡田准一の顔だからうっかり魅力的に見えちゃったのかしら?と思ったけど、別に岡田くんの顔も好みではなかった。つーかゲームキャラならともかくリアルな戦国武将のビジュアルに興味ない。やっぱドラマ!ドラマとして面白かったと言いたい!

歴史的な背景は把握できないまま、それでも少しづつ登場人物の心境に馴染んできた頃に訪れた秀吉の死。三成が転がっていた鞠を手にしたあたりから、ぐぐぐぐぐーーーーーっと、この世界に引きずり込まれた覚えがある。秀吉を見送る三成の姿……台詞も少なく大きな動きもないけど、間違いなくこの映画の名場面のひとつだった。

三成が正義の人なのか狂人なのか、岡田准一が美形だからどうとかはやっぱどうでも良くて、なんかすごいつまんない単語だけど「人間の生き様」みたいなもんに心を動かされたのだと思う。三成だけじゃなく他の多くの登場人物に対しても。だから歴史を知らなくても言葉が分からなくても面白かったのかなー、と。

予習はなくてもOK、すれば楽しみ増量

ただし一般論として、まったく未知のものよりも、ある程度の知識のある事柄のほうがより細部が気になるケースも少なくない。

なので時代劇や歴史が好きな人は、秀吉晩年から関ヶ原までの武将の動向はおさらいしていったほうが、じっくり物語を味わえると思う。

それに、ものすごく細部までこだわって作られた作品のようなので、知識があればあるほど面白いポイントを発見できるはず。教養のある人が羨ましくなるねー。

私みたいにぜんぜん知らない人は、ちょっとやそっとの予習したって無駄なので、「Don’t think. FEEL!」の気持ちで映画館に飛び込むのをおすすめします。

ついでにおすすめ

実は私は映画を鑑賞する前に、初日の舞台挨拶と監督インタビューで写真撮影をさせてもらっている。というか、舞台挨拶と監督インタビューが面白かったから、TwitterでRTされてくる感想が気になってしょうがなかったって話。

監督インタビューにしても、舞台挨拶にしても、映画を見たあとに読むと「なるほど!」ってところがたくさんあって、自分が関わってるから言うわけじゃないけど、ホント面白いのでよかったらどうぞ。

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